2006年03月29日
実施年度 |
生徒の活動 |
理解するための関連講座 |
| 1999年度 | 高校1年生の「国際情報」での調査 | HTMLを使ったホームページ作成講座 |
| 2002年度 | 高校2年生発展科目「生命」での調査 | 「帝王切開による犬の出産」ビデオ鑑賞(5月27日) |
| 2003年度 | 高校2年生発展科目「生命」での調査 | 「帝王切開による犬の出産」ビデオ鑑賞(5月27日) |
投稿者: 秋山繁治 日時: 16:32|パーマリンク |コメント (0)
これまでの調査記録 | ||
実施年度 | 生徒の活動 | 理解するための講座 |
| 1998年度 | 高校1年生の「国際情報」での調査 | 女性フォーラムの方々の講演 |
| 彫刻家・西平孝史の講演 | ||
| 1999年度 | 高校2年生発展科目「生命」での調査 | |
| 彫刻家・西平孝史の講演 | ||
| 2000年度 | 高校2年生発展科目「生命」での調査 | 女性フォーラムの方々の講演 |
| 彫刻家・西平孝史の講演 | ||
| 2001年度 | 高校2年生発展科目「生命」での調査 | 女性フォーラムの方々の講演 |
| 千葉県立中央博物館付近の調査 | 彫刻家・西平孝史の講演 | |
| 2002年度 | 高校2年生発展科目「生命」での調査 | 女性フォーラムの方々の講演 |
| 彫刻家・西平孝史の講演 | ||
| 2003年度 | 高校2年生発展科目「生命」での調査 | 彫刻家・西平孝史の講演(6月10日) |
| 女性フォーラムの方々の講演(6月17日) | ||
投稿者: 秋山繁治 日時: 16:27|パーマリンク |コメント (0)
情報収集活動を取り入れた総合的な学習
清心中学校・清心女子高等学校 教諭 秋山繁治
はじめに
1996 年頃から、岡山県内の私学では校名変更・共学化、公立では11年度からの学区制の変更に先立っての教育課程変更などを含む「特色づくり」の試みが話題になるようになった。本校でも、独自に教育改革のためのプロジェクトチーム(1994年7月から1996年8月)を組織し、これまでの教育内容の再検討を行い、新学習指導要領の改定が告示される直前の1998年度から教育課程を大きく改定した。そして、コンピュータとインターネットを取り入れた授業「国際情報」と自由選択科目「発展科目」(高校の学習範囲を超えた内容を生徒自身が選んで学習する授業で、広範囲な内容を含んでいる)が誕生した。「コンピュータ導入は受験指導の邪魔になる」とか、「従来の教科の枠を超えた授業は冒険的過ぎる」という意見もあったが、新指導要領での「情報」と「総合的な時間」の誕生が追い風になり、1998年度から年次移行で実施されることが決定した。本報告では、授業「国際情報」と発展科目「生命」での、性教育に関わる授業実践について紹介したい。
なお、本校は、カトリックの中高6年一貫教育の女子校である。1999年度の生徒数は、中学校が542名、高校が770名で、進路は、4年制大学が83%、短期大学が11%で専修学校を含めると97%が進学している。
1. 1998年から始まった授業「国際情報」はどのように展開されたか。
授業「国際情報」はパソコンを利用した情報教育を行うべく誕生した。情報教育については、これからの教育課程を考える上で基本になる新学習指導要領でも、教育改革に向けて前向きに盛り込まれる方針がうかがえる。1998年11月18日に、中学校新指導要領改定案が発表されたが、E-Mailの利用まで含んだコンピュータの学習が「中学校技術・家庭科」に必須で盛り込まれ、また、高等学校でも、新しく「情報」(2単位必修)が新設される。
本校では、「ほとんどが大学へ進学する生徒に対して、コンピュータを使った情報教育で何ができるか」という視点で考え、「1年間かけてホームページを完成させる」という作業過程で、関連内容を学習するということにした。課題として作るホームページは、公園や道路脇、街角にある野外彫刻についての調査結果を報告するものとした。インターネットを「単に直接体験を伴わない資料集め」の手段として使うだけでなく、自分の足で集める過程を大切にする意味で、写真撮影、作者や設置場所などのデータ収集と整理、という作業を組み込んだ。また、特に女性の裸像の設置については、それを猥褻、あるいは女性蔑視につながるという否定的な意見もあり、次のステップとして性教育の学習に結びつけることができると考えた。
2. 「発展科目」とは何か。
「発展科目」では、テーマ別に14講座(「中国語入門」・「英検・TOFEL講座」・「時事英語」・「アジア学入門」・「生命」・「人間とバランス」・「数学史」・「日本語」・「学園の母・マリア」・「コンピュータと数値計算」・「表現」・「創作版画実習」・「CREATIVE WRITING」・「現代社会と女性」)を設定している。講座は、前後期に分けられ、生徒の希望で選択履修できる。週2時間(連続)で実施している。
どのようなテーマを設定するかについては、全教員に公募して、事前に高2・高3の生徒に、「実際は下級生が受講する講座だが、もし受講できるとすれば」ということで、アンケートに答えてもらった。その希望数と教育方針を考えて決定した。実際には、高校1年の2学期始めに発展科目の説明会が開かれ、シラバスを使って各担当者による説明があり、それを受けて、各自が受講科目を決定していった。
3. 講座「生命」はどのように進められているか。
講座「生命」は、次のような医学、生物学、性教育、環境教育分野のテーマで、14回の授業(100分)で構成している。
・ 医学分野…「脳死」、「臓器移殖」、「骨髄移殖」
・ 生物学分野…「DNA」「分子生物学」「クローン」
・ 性教育分野…「出産」「エイズ」「野外彫刻(「国際情報で扱った内容のまとめ」)」
・ 環境教育分野…「学校内の植物観察」「岡山県の動物相」「沖縄の生物相(研修旅行との関連)」
4. 「野外彫刻は猥褻か否か」のテーマに生徒はどう答えるか。
高校1年での「国際情報」では、生徒が自宅周辺や旅行先で野外彫刻を調査し、レポート作成、ホームページへ載せるところまでの作業を終えた。野外彫刻の調査を課題としたきっかけは、「野外彫刻の設置が猥褻、あるいは女性蔑視につながる」とする意見に対して、自らの調査過程を踏まえて、最終的に女子高校生としてどのような意見を持つか、私自分自身が知りたいという気持ちから計画した。そして、生徒の意見とは別の視点からの意見を得るために、講座「生命」の講師として、外部講師(彫刻家・女性フォーラム会員)に講演していただいた。最終的には、それらの材料から、生徒が自分自身で何らかのものを収穫してもらえることと信じている。従来の教科の枠にとらわれないこのような探求活動によって、日常的に何気なく見過ごしているものに目を向け、物事を探求的に考えていく姿勢を身に付けてくれることを願う。
5. 情報教育と性教育に共通性がある。
インターネットを教育に利用する場合にいつも話題になるのは、「ポルノ、オカルト、暴力、ドラッグなどの有害情報から生徒を守るということ」と、「未熟な生徒がどんな情報を発信するか判らないので、情報発信を管理しなければならない」という視点である。「有害情報から守る」という視点では、フィルタリングの進歩してきた。そして、情報発信に対しては、ホームページを自由に書き換えさせないという方法で対応しているという話も聞く。しかしながら、セキュリティにも限界があるし、なかなか更新できない情報はすぐに色褪せてしまうのも事実である。生き生きとした教育活動に役立つためのコンピュータ、インターネットの利用はどうあるべきなのだろうか。
本校のホームページを見た方から、次のようなメールをいただいた。「ところで...、性教育の部屋が『sexuality』となっておりますが、サーチロボットの自動検索にかかった場合、きわめて不愉快なジャンルに分類されるのではないかと、大きなお世話でしょうが心配しております。『ジェンダー』等にされておいた方がいかがかと思いますが・・。」という内容であった。性教育では、「sex」・「gender」・「sexsuality」の用語が明確に区別されて使われ、それぞれ教育的な意味をもっている。しかしながら、有害なアダルト向けの情報を制限するためのシステムでは、「sexuality」が「sex」(雌雄の意味ではなく、性交の意味)と同じ要素を持ったものと解釈されて、「不愉快なジャンル(=アダルト)」に分類されるかもしれないということである。同様に、「同性愛(Homosexuality)」という用語についても同じことが言える。同性愛の人権の問題を真面目に取り上げているページも、用語が同じである限り、興味本位で性情報を扱ったものと区別されずに、同じジャンルに分類される可能性がある。「有害情報を流さない」という教育的措置が話題になっているが、一方で、このような問題も起こりうる。また、さらに、生徒が情報発信する際には、子どもの権利条約の意見表明権や表現の自由を認める立場と情報を管理・制限する立場が衝突する場合も考えられる。
情報教育では、常に新しい情報で学習内容を更新する必要がある。このような場合に、その目的が、一定の知識を与えることではありえない。臨機応変に対応できる学習姿勢、つまり、「どのように学ぶか」という、学び方を伝えることが中心になる。そして、その場合、生徒自身が「何を選択するかを自分で決定し、問題を解決する」という過程が重要である。これからの情報教育でのキーワードは「自己決定力の養成」であると思う。情報教育の目的は、情報手段を理解し、情報社会のモラルを身につけ、適切に活用して行くことが自分でできるように生徒を導くことである。このことは、今回の教育改革の中で進められている情報教育でも、性教育と共通の視点を必要としていることを意味する。
投稿者: 秋山繁治 日時: 16:25|パーマリンク |コメント (0)
はじめに
岡山県内の私学では1996年頃から校名変更・共学化、公立では2001年度から入試制度の学区制の変更に先立っての教育課程変更などを含む「特色づくり」の試みが話題になるようになった。本校でも、独自に教育改革のためのプロジェクトチーム(1994年7月から1996年 8月)を組織し、これまでの教育内容の再検討を行い、新学習指導要領の改定が告示される直前の1998年度から教育課程を大きく改定した。そして、自由選択科目として高校の学習範囲を超えた内容を広範囲に学習する「発展科目」と、コンピュータとインターネットを取り入れた授業「国際情報」が誕生した。「従来の教科の枠を超えた授業は冒険的過ぎる」とか、「コンピュータ導入は受験指導の邪魔になる」という意見もあったが、新指導要領での「総合的な学習の時間」と「情報」の誕生が追い風になり、1998年度から年次移行で実施することが決定された。
2003年度から高校の教育課程に、今までの教科の枠を超えた内容が扱える「総合的な学習」が導入された。「生きる力」を育てるという視点で考えれば、「性」も大きなテーマになると考えたが、予想に反して「性」を中心に扱った取り組みが全国的に少ないのが現状である。今回は、「総合的な学習の時間」の導入に先駆けて、本校独自の自由選択科目「発展科目」の枠の中で1999年度から開講している授業「生命」について報告したい。
「発展科目」とは何か。
「発展科目」(2単位)は、複数の講座から生徒が自由に選択履修できる形で高校2年に設定している。講座は前後期に分けて実施しているが、開講する講座については、前年度に全教員に公募し、応募があった講座のシラバスを作成し、生徒が高校1年の2学期に各担当者の説明を聞いて選び、その結果に基づいて受講科目を決定している。2004年度は18講座提示して、14講座を開講した。
「発展科目」は、生徒が自分で選んだそれぞれのテーマでプレゼンテーション能力や情報収集能力及びレポート作成の能力、創作能力などを高めることを目指している。それらはテーマが変わっても応用できる能力であり、このような「生きる力」を育てることを「発展科目」の目的にしている。
何故、授業「生命」は誕生したか。
最近、中学生だけでなく小学生による殺人事件が起こり、児童・生徒の心の問題が大きくクローズアップされるようになってきた。そして、社会的な危機感から、少年犯罪については、少年法第61条によって容疑者である少年の実名や写真を報道しないという原則があるにもかかわらず、新しい通信手段であるインターネットによって罪を犯した少年の写真が公開されるなど、社会的な規範が問われる問題さえ起きている。また、真相に迫るための情報開示の社会的な要求がある状況で、加害者に被害者の心の痛みや肉体的な苦痛が理解できないという共通点が指摘され、その原因を家庭や人間関係に求められる場合も多い。児童・生徒は、一日の多くを学校で過ごし、また、学校を中心にした人間関係の中で生きている。そして、学校生活が彼らの考え方や行動に大きな影響を及ぼしていることが事実だとしたら、この社会的現象について学校教育にまったく責任がないとはいえない。学校教育の社会的な役割を再点検し、時代の変化に対応した教育内容を考えることが社会的に要求されていると考えられる。私自身はこのような状況に対して、「生命」についての価値観を形成するために「生き方」を教育することが必要だと考え、授業「生命」を考えた。
授業「生命」は開講して6年になるが、表1で示すように2004年度は、前期で該当学年の生徒の24%、後期で33%が第一希望に選択しており、人気講座として定着してきている。「総合的な学習」が設定される前の段階では、「そんな授業をして大学受験の邪魔にならないのか」などの意見があったが、私自身は「生き方」を考えることが、将来を考える動機を与えると考えた。事実、これまでに講座の内容そのものが直接的に進路につながった生徒も多い。今年、医学部に進学した卒業生が書いた高校の思い出の文章に「・・・なかでも発展科目は私の大好きな授業でした。発展科目では、数ある特色ある講座の中から自分の興味のある講座を選び受講することができます。私は『生命』の講座を受講しましたが、普段の授業では学べない臓器移植や薬、心の問題などについてより深く学び、考え・・進路を考えるときに大きな影響を与えた・・」とある。
「生き方」を教育するとは、「考え方」を一定の方向に導くというものではない。提示された材料(教育内容)を生徒自身が学んでいく過程で、「考え方」を身につけていくものである。したがって、この授業は、考える材料の提供(話題提供)の役割をするものであり、どのように考えるかの試行錯誤をどのように体験させるかが指導上重要になる。「生き方」を考える教育では、教科指導のようにより多くの知識を持った優位なものが劣位なものに一方的に教えるという図式は成り立たない。適切な材料を供給できるかどうかが大切で、指導する側がどのような経験をし、どのように生きてきたかという自らの生き方が問われることになる。
授業「生命」はどのように進められているか。
授業「生命」では、前期は「性」、後期は「心と身体」というテーマを設定して内容を構成している(表2)。「性」について学ぶことから出発して、人には多様な考え方があることを認識し、最終的に生徒自身が「どのように生きるか」を再考することを目的にしている。具体的な手法は4つに分けられる。①知識の習得を目指した「講義」(担当者以外に校外講師にも依頼)。②グループ討議や心理テストなどによる「自己分析」。③与えられた課題レポート作成のための「調査活動」。④プレゼンテーションをするためのHTML形式での「課題レポート作成」である。各回の授業の感想は、e- mailで提出することになっている。
授業の中核をなすのが「調査活動」で、正解のない課題に教師と生徒で調査や作業をしながら取り組み、共に考える過程を取り入れている。「知識をもった教師が生徒に一方的に教える」という今までの授業では、教師と生徒が興味を共有できるような授業ができないと考えた。知識中心の授業で「教科書に載っていないことは、勉強しなくてもいい」とか、「テストに出なければやらなくていい」という損得で物事を考えるような発想になってしまっている生徒も多くなり、ボランティア活動でさえ、評価されるからやるという損得の発想になってしまっている状況を打破するためには、生徒にとって魅力のあるテーマを今までの授業と違う発想で考える必要がある。
前期の「調査活動」の課題は「野外彫刻は猥褻か芸術か」である。野外彫刻の調査をテーマにしたきっかけは、「野外彫刻の設置が猥褻、あるいは女性蔑視につながる」とする意見に対して、自らの調査過程を踏まえて、最終的に女子高生としてどのような意見を持つか、私自身が知りたいという気持ちから出発した。授業では、受講者全員で、①野外実習:30名を5名ずつに分け、班毎に調査地域を分け、90分で往復できる調査計画を立て現地へ行き、1人1つの野外彫刻を見つけてデジタルカメラで撮影し、作者紹介などの掲示物や設置環境、感想を調査表に記録する。②自分自身での調査:新たに自宅周辺や通学途上で見つけた野外彫刻を①と同じ方法で調査する。③レポート作成:持ち帰った記録表からレポートを作成し、プレゼンテーション用に HTML形式のファイルを作成する。④多様な立場の意見聴取:野外彫刻作者である彫刻家の意見と、野外彫刻から女性問題を考えている女性グループの方の意見を聞く。⑤自分自身の意見:レポートに自分の最終的な意見を書き加えて完成させる。
後期の課題は、「学校飼育動物は、生命尊重を考える教材になっているか」である。出身小学校に行って、動物の種類や飼育環境について調査し、ペットや飼育動物の死を考えるなどの考察を行なっている。
調査活動を重視することにより、学習者は普段見過ごしている身近なところにも研究テーマがあることに気づき、課題解決のための情報収集をインターネットに依存することなく、自分の足で歩いてデータを得るという体験を通して、自らの性、つまり「女性」について再考し、「性」ついて学習することができると感じている。
「性」についての授業を展開する。
授業「生命」では、前後期に共通して「性」の知識を扱っている。それは「生き方」を考える上で、「性」の問題が重要だと考えたからである。性教育といえば、最近、中学生に必要な性の知識を与えるということで作成された「思春期のためのラブ&ボディBOOK」(母子衛生研究所)という冊子が話題になるなど、性教育の進め方についていろいろな場所で論議されている。高校3年生の性交体験者が4割を越し、未成年の中絶者が年々増えている状況を考えると、私自身は、避妊を教えることが性交をすすめると危惧するより、性の基礎知識を的確に与えることを優先することが必要であると考えている。
また、「女子高生の性の乱れ」と表現されるように女性の性経験ばかりに好奇の目を向け、中絶や望まない妊娠などで「傷つくのは女だけだ」といわれるように、性についての男女間の意識の歪みが存在することは、人権の問題であるとも考えられる。また、同性愛などの性的なマイノリティに対する偏見についても考えなければならない時代になっている。現代の非常に多様化した「生き方」を考えるとき、「性」と正面から向き合うことはどうしても避けられないとことであり、「性」を扱う教育(性教育)をもう一度見直す必要があると考えている。性教育の進め方が難しい時だからこそ、「生命」の授業で「性」を通しての生き方を考えていく機会が必要だと考えている。
なぜ、性教育が進められにくいのか
1993年に、岡山県性教育協議会で、教師に対して性教育についてのアンケートが行われた(図1)。調査されたのは、岡山県内の高等学校19校(476名)である。「高等教育において性についての指導が必要ですか」という質問に対して、「必要である」と答えた人が97%である。その理由について年齢別にみると、20・30代では39%が「自分を大切にして欲しい」が最も多く、次に「性道徳の低下」が23%であった。それに対して、40、50代では、「性道徳の低下」、「自分を大切にして欲しい」がそれぞれ31%、33%で、二つの理由がほぼ同じ割合をしめている。また、男女別にみると、男性では「性道徳の低下」が32%をしめるのに対して、女性では、「自分を大切にして欲しい」が50%をしめ、「性道徳の低下」は15%にしかならないのが特徴的である。
女性や若い世代の教師が「自分を大切にして欲しい」という、生徒への直接的な要望をあげているのに対して、男性や年齢が高い世代では、「性道徳の低下」という社会への影響を理由としてあげている。性教育についての考え方に性別や世代によって大きな違いがあることがわかる。
この結果の背景には、教育活動を個人の幸福に帰着させるものとするか、または社会に対する役割を果たすものとするか、という考え方の違いがある。前者は個人主義だととらえられるし、後者は個人を大切にする視点を欠いているととらえられることにもなる。性教育の必要性は多くの教師が認めているが、性別や世代によって求める方向が異なり、そのことが性教育を進めにくくしている。この授業で進めている「多様な考え方があることを知る」とうことは、生徒だけでなく、教師を含めた大人にも必要なことである。
情報教育との共通点がある。
この講座では、課題レポートを学校のホームページに公開している。ホームページは、自分が作った作品が公開されるということで、課題に取り組む意欲を高める役割を果たすと共に、情報発信をするときのルールを習得する機会として役立っている。また、授業の感想をe-mail で受け取るというようにインターネットを積極的に利用しているが、プライベートな感覚で書いているので、レポートで提出させるのに比べて、外向きでない高校生の姿を垣間見ることができる。学校でのインターネットの利用については、1998年頃から多くの学校でパソコンが導入され、「ポルノ、暴力、ドラッグなどの有害情報から生徒を守るということ」と、「未熟な生徒がどんな情報を発信するか判らないので、情報発信を管理しなければならない」ということが問題になった。その後、この数年間で学校だけでなく家庭にもインターネットが急速に普及し、今では、パソコンは情報収集のツールとしての利用が当たり前になった。そして、e-mailは、携帯電話の爆発的な普及により、高校生の9割以上が所持するプライベートな通常の通信手段になった。しかしながら、「校則では、携帯電話の所持の禁止になっているものの、ほとんどの生徒が実際には所持している」というようなダブルスタンダードな状況をつくっている。広く普及したからといって、インターネットが持つ根本的な問題が解決したわけではない。逆に、普及すればするほど問題(被害・加害)に巻き込まれる可能性が高まるというのが当たり前の論理である。だとすれば、それに対する教育が必要になってくるのは当然である。例えば、ホームページには放送的性質があり、そこから派生する問題については理解する必要がある。自らがホームページで情報発信する過程で、肖像権、著作権、人権の侵害などの加害的な問題を起こすかもしれないことを学習しておけば、自らの問題として身近に感じることができると考えられる。授業「生命」で、情報を発信する過程を組み込んだのは、情報発信のルールを生徒の活動の中で学べるからである。
最後に
時代の要請に応えた教育を目指して出発した授業「生命」は、単に目新しいものを取り入れた授業ではなく、時代が変わっても通用する「大切なもの」を求めて考えたものである。かつて「ブルセラ」という言葉で話題になったブルマーだが、1990年代になって、ブルマーの着用を嫌がる生徒が増加し、不満の対象になっていた。多くの学校でハーフパンツ等に変更されたり、規定を取りやめたりしている。1995年6月の時点で、調査した公立高校10校、私立高校6校のうち、ブルマーを義務づけているのは、公立高校1校、私立高校2校で全体で19%であった。今では、ブルマーを着用している高校生を見ることはない。ブルマーは、「女性は素足を見せるものではない」という時代には、女性の自由の証であったが、今ではセクハラにつながると言われるように変化したのである。その底流には、女性が「自立的に生きる」ことを獲得してきた歴史が流れていることに目を向けなければならない。教育現場を取りまく社会は日々変化している。学校教育も社会の変化に対応していかなければならない。対応することを「迎合する」と解し、個人主義で社会が滅びるという人がいるかもしれない。しかし、私はこれからは、個人が大切にされる時代であって欲しいと思っている。「自己肯定感をもって自立的に生きる」ことは、生徒にとってだけでなく、私自身を含めて大人の永遠の夢かもしれない。
参考文献
1) 性教育協議会:性に関するアンケート 集計.平成7年度研究集録.p47-50(1995)
2) 東京都幼稚園・章・中・高等学校性教育研究会 : 2002年調査 児童・生徒の性.学校図書(1993)
3) 秋山繁治:高等学校での性教育の実践と課題 (HRと教科での指導).全国性教育連絡協議会 第23回全国教育研究大会要項.p48-49(1993)
4) 秋山繁治:高等学校での性教育の実践と問題 点(ホームルーム担任として).日本性教育学会 第17回全国大会要項.p39-40(1986)
5) 秋山繁治:"SAFER SEX"の翻訳によるエイズ 学習.月刊高校生3月号.p38-45(1994)
6) 秋山繁治:エイズを学ぶ海外研修旅行.月刊 高校生6月号.p62-69(1995)
引用文献
7) 秋山繁治:性教育の日常的な実践と課題.清心中学校清心女子高等学校紀要.No.12.p1-31(1996)
8) 秋山繁治:清心中学校・清心女子高等学校の展望アンケート「西暦2000年に清心学園は何を提供できるか」から将来を考えるNo.13.p33-113(1999)
投稿者: 秋山繁治 日時: 16:18|パーマリンク |コメント (0)
アカハライモリの貯精嚢精子の季節変動
秋山繁治(清心女子高等学校,山口大学・理工・自然共生)・岩尾康宏(山口大学・理工・自然共生)
アカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)の雌は雄から受け取った精包(精子)を貯精嚢内に蓄え,産卵時に未受精卵を総排出腔内で受精させる。産卵期は4月から7月であり、この時期に配偶行動が見られる。
一方、秋(10月頃)にも配偶行動がみられ、晩秋からホルモン注射によって雌は受精卵を生む。
これらは,雄から雌への精子の受け渡しが本来の繁殖期以外にもおこなわれている可能性や,渡された精子が雌の貯精嚢中でかなり長期間にわたり受精能を保持していることを示唆している。今回、貯精嚢中の精子数の変動、卵巣及び精巣組織の季節変化を詳しく調べ,ホルモン注射による産卵誘導により貯精嚢中の精子の受精能保持期間の確認をおこなうことで、有尾両生類での体内受精のしくみを詳しく
調べた。 岡山県上斎原村の河川と水田側溝に生息する個体群を1999年9月から2000年9月まで調査した。卵巣重量は産卵期の4~5月に最大となったが、精巣重量は精子形成中の8~9月に最大となった。10月頃から輸精管の精子を放出できる雄個体が見られた。雌の貯精嚢の精子数は繁殖期後の8月から10月にかけて最も少なくなった。5月に受精卵を産んだ雌を12月まで雄から隔離して屋外で飼育した場合,新たに受精卵を産むことはできなかったので,夏期に貯精嚢内の精子は受精能を失うと考えられる。一方,野外から採集した雌は冬期にもホルモン注射により受精卵を生むので,雌は秋の配偶行動で精包を取り込んでいると考えられる。5月に受精卵を産んだ雌を低温(4℃)で保存すると12月に受精卵を生んだので,低温下では精子は7ヶ月以上受精能を保持すると考えられる。これは秋に受け取った精子が春まで受精能を保持できることを示している.一方,4月でも貯精嚢に精子が見られない雌を確認したので,より確実な受精のために春に新たに受け取った精子が使われるものと考えられる。
投稿者: 秋山繁治 日時: 16:05|パーマリンク |コメント (1)
清心女子高等学校 秋山繁治
生態調査の方法
生態調査では,標識再捕法がよく使われてきた。標識再捕法は,調査地域の個体群の一部を捕獲し,標識をつけてから放し,再捕獲して,再捕獲したときの標識個体の割合から全体を推定する方法としてよく知られている。また,一定の時間を経過した後の再捕したときの位置情報から,移動方向や距離を調べることによって,季節移動のパターンなどを調べるのに使われてきた。標識は,昆虫では頭部や翅の一部に印をつけたり,ヘビでは鱗の一部を切断したり,カメでは甲羅に穴をあけたりする。両生類のカエルでは,指切り法(Toe Clipping:左右前肢及び左右後肢の指を切断して個体識別する方法)がよく使われてきた。この標識法の他に,最近になって,マイクロチップを埋め込む方法,色素を注入する方法(注1),発信機を装着する方法などの新しい手法が開発されてきている。
アカハライモリについての調査方法の検討
今回はアカハライモリの調査は,繁殖期や越冬期の移動パターンを調べることを目的にして行った。そのため集団としてでとらえるだけでなく,個体識別して,個体ごとの移動を追跡することが必要となった。先に述べたように同じ両生類のカエルでは,指切り法で個体識別できるが,アカハライモリでは,再生力があるので長期間個体を識別するには不向きである。また,また,オオサンショウウオなどでは,体の模様(スケッチや写真)から個体識別しての調査が行われてきたが,多数のイモリを扱う場合には適切でないと判断した。また,色素を注入する方法においては長期間もたないこと,発信機をつける方法では,今の技術レベルではイモリの体に比べて発信機が大きすぎて,行動に制限がかかることが推定されることと,経済的負担が大きいことを理由に導入を断念し,最終的にマイクロチップの埋め込みによる方法を試みることにした。
マイクロチップによる方法
マイクロチップは,犬などの動物を登録して迷子になった場合に迅速に見つけ出すことを目的に(注2),日本獣医師会が導入を機関決定して話題になったことがある。皮下に小さな固有の番号を発信するチップを埋め込んで,外からリーダーで読み取ることによって個体識別ができるようになっている。体の一部に注入しているので,なくなることがないのが利点である。機器は数社(注3)から出ているが,今回の調査では,現在日本で最も多く使用されているトローバン社のものを使用した。トローバン社製のシステムは,体内に埋め込むチップ(トランスポンダー)と注入用針のセット,注射器,リーダー(LID 500 Hand Held Reader:写真1,LID 570 Pocket Reader:写真2)からなる。LID500は16~20cm離れたところから広域にデータの読み取りができるので,一度に数匹のイモリのデータを読みとることができる。LID570は携帯用であり,2~3cmに接近した状態でないと読み取ることができないので,一匹ずつ読み取る際に補助的に使用した。チップはリーダーによって作動するので,メンテナンスもバッテリーも必要ない。

(写真1)
(写真2)
チップの打ち込み方
チップ(ID 100 Implantable Transponder:写真3)は2.12×11.5mmの大きさがあり,イモリに打ち込む針(直径2.12mmのパイプ状針:写真4)を使って体腔に挿入する。肝臓に傷がつかないように,針の先端を下腹部から挿入し,半分挿入した段階で針を回転させて,チップをゆっくりと押し込み,針が奥まで入らないように腹部をつまんでチップを体腔に移動させた。この方法で死亡した個体はいない。深く刺して傷口を大きくすると腹圧で腸が体外にでてくるので注意を払う必要がある。

(写真3)
(写真4)
読み取ることのできるデータ
リーダーで読み取れるトランスポンダーの情報は,「00-061D-55A0」のような10文字の英数文字配列・識別コード(IDナンバー)で,再捕したときの個体識別をおこなう。各トランスポンダーには,5500億の変更不可能かつ固有のID番号が,製造時にプログラムされていて,改ざんできないシステムになっている。購入時でも並んだ番号などの指定はできない。チップ内には,コイルが入っており,リーダーからの電磁波に対してコイルが発した共振周波数を読み,ID番号に変換してリーダーの液晶画面に表示する仕組みになっている。
チップを打ち込んだ影響イモリ20匹にチップを埋め込んだが、2ヶ月間の実験室内での飼育では、死亡した個体はいなかった。また、チップの脱落もなかった。
調査地のイモリの自然観察
調査地は標高約700mの地点で,冬期にはかなりの積雪がある地域である。調査地の水田側溝の水温は夏期19℃,冬期0.5℃くらいである。雪が解け,田植えの水が入る4月下旬から活動を開始する。5月になると行動範囲を水田全域に広げ,9月初旬まで活発に活動する。夏期に水温が30℃以上になると,水田の出水管の中や湧水が流れこむ水温の低い溜まりに移動している.繁殖期は5月から7月上旬であり,雄が雌の吻端で尾を震わせたり,雌が雄の後を追うといった配偶行動が見られる。卵は1個ずつ稲などに,葉にくるむようにして産み付ける。7月頃から幼生は水田内の溜まりで多く見られたが,9月中旬には変態して陸に上がる。イモリは水温の低下とともに活動が低下し,12月には落ち葉やビニール袋の下などに多数集まって塊状になっていた。積雪下の水田側溝の水温は1℃くらいで,イモリはほとんど動かない。この状態で冬を越していると考えられる。
(写真5)
マイクロチップによる調査
調査地域は,イモリが多数生息している水田を選んだ。水田の広さは約20m×70mで,コンクリートの水田側溝が設置されている。水田側溝は川に流れ込む水路につながっている。今回の調査では,繁殖期後(7月)から越冬期(12月)までのイモリの行動圏を調べることと,コンクリートの水田側溝の設置によって流されていく個体があるかどうかを調べることを目的に行った。(写真5)
チップの埋め込みは,6月(113匹),9月(73匹)に実施し,一日チップの打ち込みによる異常がないかどうか様子をみて放流した。調査は,水田側溝を中心に,水路を一定の区画に分けて,個体数と再捕個体を記録した。
6月に113匹を水田と水路に放流したが一か月後に水路では2匹しか再捕できなかった。このことは,多くが水田で行動していたと考えられる。また,9月に73匹を水田側溝に放流したが,10月から積雪前の11月まで,約30匹が再捕できた。個体識別して,移動距離などを追跡すると,よく動くものでは50mは移動することがわかった。また,水田側溝から流されて下流の川まで流されている個体もあることを確認した。
イモリを集団としてみた場合は,繁殖期は水田で行動するものが多いが,9月から水田内の水が少なくなるとともに水田側溝に移動してきて,多いときには1000匹以上が生活場所として利用していることがわかった。12月からは積雪のために調査が困難であるが,この調査をさらに一年間を続けて,イモリの生態の一部でも解明したいと思っている。詳細な記録についてはさらにデータを取り,解析して次の機会に報告したい。
最後に 現在,世界規模で両生類が減少している。その原因は地域によって様々だが,人間生活が影響していることは確実である。「両生類」は水と陸地の両方の環境で生活しているということであるが,両方に生きられる便利な生物ということではない。むしろ,両方の環境がないと生きられない,つまり,生息環境の変化に影響されやすい生物だということを意味している。減少の理由については,地域によっていろいろな理由,例えば,紫外線の増加による卵の発生異常,水質汚染,土地の造成による繁殖場所の消滅などが考えられる。
日本では,両生類の顕著な減少は特に水田で起こっている。水田の周辺環境を生息場所に使っている両生類は,水田の減少や圃場整備による環境の改変によって減少しているのである。圃場整備とは,稲作の効率化を目的とした改修工事である。旧来の水田は一枚の面積が小さく,形も不規則なので大型の機械を導入するのには不向きなであった。このため分散した田をまとめて大きくし,直線的に区画整備がおこなわれてきた。水田の水路も,メンテナンスの容易さを考えて,コンクリートのU字溝が敷設され,使わない時期は乾燥化してしまう構造になっている。この工事は,農業の効率化を中心に行われたもので,水田で生息する生物への配慮はなされていない。その結果として両生類に大きな影響が出ているのである。例えば,ダルマガエルは岡山市内吉井川河口付近などの岡山県南部水田地帯に昭和30年代まで多く分布していたが,激減し,現在ではごく限られた地域に点在して生息しているにすぎない。ダルマガエルは一生を水田付近で過ごすので,水田が一時的に乾燥するだけでも生息することができない生活様式であるゆえに環境の改変の影響を直接的に受けたものと考えられる。こうして,市街地だけでなく,水田がある農作地域でも全国的にカエルが消えているのが現状である。
イモリやサンショウウオの生態については,まだまだわかっていないことが多い。今回紹介したことを含め,様々な方法で両生類の生態を解明することによって,両生類への理解がすすみ,その保護に役立てればいいと思う。
なお,本研究は平成13年度科学研究費助成金(奨励研究(B))を受けて進めたものの一部である。
(注)
1)色素注入法について
アメリカのノースウエスト・マリーン・テクノロジー社製で,Visual Implant fluorescent Elastomer (VIE) tagsというものがある。特に魚類での実績がある。色素は,暗闇でUVを当てると蛍光を発する。寿命は1年位。米ウエストバージニア州立マーシャル大学では,州で保護されているサンショウウオ(グリーンサラマンダーAneides aeneus,ケイブサラマンダーEurycea lucifuga)の生活史の研究に色素注入法が使われており,弊害が無く,効果的であることが確かめられている。色素については,短期間で,多くの個体に標識して集団の動きを調べる場合に適している。
http://www.mp1-pwrc.usgs.gov/marking/vie.html
2)岡山県での犬の登録へのマイクロチップ導入について
平成12年度から,犬の登録の権限が市町村へ委譲されている。岡山県下ではマイクロチップを導入しているところはなく,また,導入の予定も今はない。一方,岡山県獣医師会では,海外へ犬,ねこを移動さす場合にマイクロチップの埋め込みの必要があることから,マイクロチップ及びリーダーを1台準備している。
3)マイクロチップの入手について
次の会社が扱っている。
トローバン社(販売:サージミヤワキ)
http://www.trovan.com/
デストロン社(販売:大日本製薬)
http://www.destronfearing.com/index.html
データマース社(販売:富士平工業・共立商事)
http://www.datamars.com/
AVID社(販売:共立商会)
http://www.avidmicrochip.com/index.htm
http://www.flex.net/~avid/index.html
投稿者: 秋山繁治 日時: 16:05|パーマリンク |コメント (0)
(シリケンイモリ Cynops ensicauda)

沖縄県産 撮影 秋山繁治 2001.5.1
シリケンイモリ(Cynops ensicauda)は、奄美諸島、沖縄諸島に分布。徳之島にはいない。全長雄20-12cm、雌12-15cm。アカハライモリと似た求愛行動を示す。婚姻色はアカハライモリより地味である。
雌の全体の姿と肛門周辺


雄の全体の姿と肛門周辺


2001年12月21日撮影:秋山繁治
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:58|パーマリンク |コメント (0)
(オオイタサンショウウオ Hynobius dunni)

大分県産 撮影:秋山繁治
オオイタサンショウウオは、大分県、高知県、宮崎県に分布している。
池や溝などの止水流域に棲む小型サンショウウオで、黒褐色の地色に橙色から薄茶色の小班が散らばっている。大きさは12~15cmのものが多い。
卵嚢は、繁殖シーズンに雌一匹で1対産卵する。卵のうはバナナ状で雌一匹が一対の卵のうを産む。
一卵のう中には、多いものでは80個以上の卵が含まれており、卵を包む膜は強靭で破れにくい。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:57|パーマリンク |コメント (0)
(イボイモリ Hynobius Boulengeri)

鹿児島県産 撮影:秋山繁治 2001.3.15
イボイモリ(Hynobius boulengeri)は、沖縄本島、奄美大島、徳之島、渡嘉敷島にのみ分布。森林とそれに接する畑に生息している。
全長約16cm。全身黒褐色で手足の裏と校門付近が橙色をしている。
肋骨やイボ状の突起がある。
1~6月に水溜り近くの陸上に産卵する。
形態や分布が貴重なことから沖縄県指定の天然記念物になっている。
イボイモリが生息している池
卵は水溜りに近い陸上に一個ずつ産んでいる。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:57|パーマリンク |コメント (0)
(ヒダサンショウウオ Hynobius kimurae)

ヒダサンショウウオ(Hynobius kimurae)は、岡山県では県北の山地帯に生息している。
渓流域に棲む小型サンショウウオで、黒褐色の地色に橙色から薄茶色の小班が散らばっている。産卵期は、岡山県では3月下旬から4月と思われる。
全長は12~15cmのものが多い。西中国山地の生息域は南西限になっている。
中国山地の標高1000m以上のブナやミズナラが多い夏緑樹林帯に生息している。


卵のうは他のサンショウウオより丈夫
卵嚢は、バナナ状でついになっている。繁殖シーズンに雌一匹が1対の卵のうを産卵する。大きな石の下に産み付けている場合が多い。卵のう中には約20個の卵が含まれており、卵を包む膜は強靭で破れにくい。約二ヶ月で孵化し幼生になる。

幼生の全長は約50mm
幼生は大きくなると、尾に黒班があり、四肢には黒い爪がある。8月頃になると4cm程度に成長する。
流れのゆるい渓流の脇の脇の溜まりに多く見られる。多くの幼生は10月頃に変態する。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:56|パーマリンク |コメント (0)
(オオダイガハラサンショウウオ Hynobius Boulengeri)

撮影:2001.5.20 愛媛県
オオダイガハラサンショウウオ(Hynobius boulengeri)は、九州、四国、紀伊半島のみに分布。山地帯の渓流付近に生息している。
全長約16cm。全身黒褐色で、からだに模様はない。
4~5月に渓流の石の下に一対の卵嚢を産みつける。
渓流の石や朽木の下に潜んでいる。
同所的にタゴガエルが生息している場所が多い。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:55|パーマリンク |コメント (0)
(ブチサンショウウオ Hynobius naevius)

岡山県産 撮影:秋山繁治
ブチサンショウウオは、岡山県では県北部の山地帯に生息分布がみられる。渓流域に棲む小型サンショウウオである。
本州(鈴鹿山脈以西)、四国、九州に分布している。
岡山県では、県中部から中国山地まで分布している。成体は、ナス紺色の地に、銀色の地衣類状斑紋がある。全長は12~13cmくらいである。
成体は、渓流付近の石、倒木などの下に潜んでいる
卵嚢は、繁殖シーズンに雌一匹で1対産卵する。卵嚢は、バナナ状で対をなしている。
片方の卵嚢で約10個の卵が入っている。
孵化した直後の幼生。
ブチの幼生は、他の渓流性のサンショウウオの幼生と異なり、爪が発達していない。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:55|パーマリンク |コメント (0)
(オオサンショウウオ Andrias japonicus)

岡山県産 撮影:秋山繁治 2000.8.23
オオサンショウウオは、全長1mを超える世界で最も大きい両棲類で、国の特別天然記念物である。
岐阜以西の本州と四国、大分県に分布している。
岡山県では多くが県北部を中心に生息している。
中国から輸入され、放流された中国産のオオサンショウウオも生息するものと考えられている。
川﨑医科大学では、140cmを超える巨大なオオサンショウウオが飼育されている。
オオサンショウウオは昼間は小さな谷川に身を潜めている。
写真は樹林に覆われた小さな谷川を歩いていた小さない個体である。
25mmから35mmで幼生は孵化してくる。黄白色で腹部には卵黄をもち、水底に横たわっている。
生息を確認した渓流部の環境。
かなり幅の広い河川の石の隙間などで姿をみることが多いが、渓流付近の溜りで姿を確認した。
卵は石の下の隙間の中に産みつけられる。
岡山県倉敷市の川﨑医科大学分子生物学教室で飼育されているオオサンショウウオ。
全長は140cmを超える巨大なもので、40年以上飼育されている。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:53|パーマリンク |コメント (0)
(ハコネサンショウウオ Onychodactylus japanicus)

岡山県産 撮影:秋山繁治 2002.4.28
ハコネサンショウウオは、岡山県では県北部の山地帯に生息分布がみられる。
渓流域に棲む小型サンショウウオである。成体は、肺をもたない。尾が長く、全長の2分の1より長い。
背面中央部に朱色の帯状斑紋がある。斑紋は、連なった帯状であったり、細かい斑点になったりする。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:53|パーマリンク |コメント (0)
日本にすむ有尾類は,イモリ科,サンショウウオ科,オオサンショウウオ科であるが,岡山県に生息するのは,イモリ科ではアカハライモリ1種,サンショウオ科では,カスミサンショウウオ,ブチサンショウオ,ヒダサンショウウオ,ハコネサンショウウオの4種,オオサンショウウオ科ではオオサンショウウオ1種である。いずれも日本の固有種である。特にオオサンショウオは,両生類としては世界最大の種であり,1952年に国の特別天然記念物として指定されている。
オオサンショウウオは,県北部の標高300m以上の水温の低い吉井川などの主要河川の支流や山地の渓流に棲み、ブチサンショウウオ、ヒダサンショウウオ、ハコネサンショウウオの3種は県北部の中国山地の標高500m以上の森林内の渓流に棲む。教材として選んだアカハライモリ、カスミサンショウウオの2種は,県南部から県北部まで、他種に比べて人里に近い地域に広く分布している。
成体を捕獲することは,個体数が限られた生物集団では,自然環境での生息数の減少につながる場合があるので、できうる限りさけたい。特に,カスミサンショウウオなどの小型サンショウウオについては,岡山県では1つの生息地の個体数があまり多くないので影響は大きいと思われる。また、その生息数は、1匹の雌が1年に1対の卵嚢しか産まないことから、産卵された卵嚢の数の半分の数が産卵に訪れた雌の個体数であると推測できる。行動範囲も狭く、産卵場所も毎年一定しているので、産卵が少ない場所は個体群が少ないことを意味する。
1989年から有尾類を調査してきたが、これまでに、個人で調査できる限られた範囲でも、5カ所の繁殖地が失われている。それぞれの具体的な原因は、学校敷地の整備工事、河川改修工事、観光地の整備工事、体育館の建設工事、道路整備工事など大規模な生息環境の変化である。その他にも、成体や卵嚢を確認できなくなった箇所が数カ所ある。
有尾類は、湿地を含む水辺に生活している。今まで、湿地は農業にも向かない、建物も建てにくい、利用価値の低い場所であった。また、自然観察を目的とされた場所も、開発からはずされていることが多かった。しかし今では、あまり目を向けられることの少なかった山地の湿地も、ゴルフ場建設の対象になったり、自然観察の場所も、より多くの人が出入りできるように、改修工事がされるようになった。自然観察路も、整備補修されてきている。その中で物言わずひっそりと生活している小型の有尾類の仲間達が少しずつ、その数を減らしている。
投稿者: 秋山繁治 日時: 15:52|パーマリンク |コメント (0)
両生類は、水辺環境が全くない場所では生きることができない。カスミサンショウウオの飼育をしていて変態期に蓋をするのを忘れていて、容器の外に逃げ出した個体の多くを、水分欠如が原因で殺してしまったことがある。両生類は、水分をまったく補給できない環境では一晩で死んでしまうのである。このように水との関係が密接な両生類にとって、最近の水田の基盤整備や土地造成などの開発工事は、その生息に深刻な影響を与えている。水辺環境は生命線なのである。水田地帯や宅地を流れる河川の多くは、3面コンクリートで固められ、ため池も出水口付近だけでなく、周囲をぐるりとコンクリートで固められた姿をよく見るようになった。人間にとっては、コンクリート化は、メンテナンスに費用がかからず、管理しやすくするための合理的な方法であるだろう。しかしながら、一方で植物は繁殖しにくく、水が浄化されにくくなり、水底に汚泥がたまって悪臭を放つようになっている。また、ため池では、コンクリートの表面に藻類が付着し、滑りやすくなり、子どもが近寄るのも危険な池になり、周囲を金網の柵が取り付けられることになる。人間が近寄らないことは、子ども達にいたずらされる機会が減るということで、生物にとっていいことだろうか。コンクリート化によって、卵が孵化し成長するのに欠かせない環境の水質を悪化し、土や石の隙間にある越冬場所が無くなり、植物に群がる餌となる昆虫を減少している。湯川秀樹の「人間と自然」と題した作品の冒頭に「自然は曲線を創り、人間は直線を創る」という言葉がある。「遠近の丘陵の輪郭、草木の枝の一本一本、葉の一枚一枚の末にいたるまで,無数の線や面が錯綜しているが、その中に一つとして真直ぐな線や完全に平らな面はない。これに反して、田園は直線をもって区画され、その間に点綴されている人家の屋根、壁等のすべてが直線と平面とを基調とした図形である」。さらに話は「しかし、さらに奥深く進めば再び直線的でない自然の真髄に触れるのではなかろうか」と話は進んでいく。理論物理学の学者の話であるが、今後の自然に対する関わり方に示唆をあたえてくれるように感じられる。湯川の言う通り、人間が直線を好むのは、それが簡単な規則性に従うので扱いやすいからであろう。このように人間はこれまで合理的を求めて人間社会は発展させ、豊かにしていったのは確かである。かといって、今さら元の生活に戻すことは不可能である。では、どうしたらいいのだろうか。こういう時期だからこそ。知識を深め、人間の豊かさをあらためて問い直すことによって、人間の生活と生物の生きやすい環境のバランスを考えた新しい局面に遭遇できるのではないだろうか。両生類の保護では、繁殖地を保護するだけでなく、繁殖地に結びついた後背地の森林を含めた生態系全体の保護の必要を考えなければならない時代が到来している。
(『ため池の自然』(信山社)より一部抜粋:秋山繁治)