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2004年01月01日

カスミサンショウウオの保護

 2000年にだされたレッドデータブック(※)に京都・大阪地域の個体群が「絶滅のおそれのある地域個体群(LP)」として、保護の対象に取り上げられています。その原因は大規模な土地開発による生息地の消失と、それにともなう汚水の流入などの環境悪化、減反による 水田の乾燥化、そして、ペットとしての捕獲、アメリカザリガニや外来の捕食性魚類による捕食などがあげられていますが、このような状況は、保護対象となった個体群だけでなく、各地の止水性サンショウウオを取り巻く状況でもあります。
水田側溝のコンクリート化が進み、コンクリート製のU字溝が、陸上と水域を分離する「死のトラップ(落とし穴)」になっている例が報告されています。私自身も岡山市湯迫で、乾燥化したコンクリート水路の底にカスミサンショウウオの死体を見つけたことがあります。産卵場に使われていた素掘りの水路は乾燥したコンクリート水路になってしまうと、工事後数年間は、生き残った成体がしばらくは産卵にきますが、徐々にその数は減少していくのが常です(写真13,14)。

工事前:素掘りの水路
写真13.工事前:素掘りの水路

工事後:コンクリート化された水路
写真14.工事後:コンクリート化された水路

 次にゴミの投棄によって生息地が汚染される場合があります。産卵に使われる場所は、人里離れた環境であることが多いのですが、そんな場所ほど不法投棄の場所になりやすいのも事実です。実際に岡山市内の産卵場所に、冷蔵庫や自転車、バイク、瓦礫などが投げ込まれている状況があります(写真15)。大型ゴミ引取りの有料化の煽りを小動物が受けているのです。

生息地へのゴミ投棄
写真15.生息地へのゴミ投棄(岡山市)

 さらに、岡山市内でもペットショップでカスミサンショウウオが売られていました。人間のペット指向の多様化を受けて、これまで家庭で飼育されることが少なかった両生類すら乱獲される可能性があるのです。
 人里に近い環境に棲んでいるがゆえに、近年、道路や水路の工事や圃場整備などの人間の生活に関するものの影響を受けて、生息地を激減させているサンショウウオの保護を考えていくと、効率化を優先してきた現代社会とのシステムそのものの問題点までみえてくるかもしれません。

※環境庁編。2000.改訂・日本の絶滅のあるおそれのある野生生物 -レッドデータブック- (爬虫類・両生類).120pp.

投稿者: 秋山繁治 日時: 17:42|コメント (0)トラックバック (0)

類似種との識別

 カスミサンショウウオと分布が重なる止水性のものとして、大分県を中心に熊本県と、大きく離れた高知県の一部に隔離して分布しているオオイタサンショウウオがいます。環境庁のレッドデータブック(※)の「絶滅の危険が増大している種」という絶滅危惧種2類(VU)にあげられている種で、生物地史を考えていく上で重要なものと考えられています。カスミサンショウウオより体が大きく、全長が10~16cmあります。また、尾の上下に黄色い縁取りはなく、全体的に緑がかった褐色をしています。卵嚢は大きく、外膜がしっかりしており、カスミサンショウウオのものと区別できます。

投稿者: 秋山繁治 日時: 17:42|コメント (0)トラックバック (0)

カスミサンショウウオの発生

アカハライモリの受精は、貯精嚢に貯えておいた精子を使った体内受精であると述べましたが、有尾類の約90%の種は体内受精をしています。両生類というと、カエル(無尾類)を思い浮かべられることが多いですが、体外受精をし、幼生として変態するまでの時期を水の中で過ごし、陸に上がって性成熟に達するというのは、今回紹介しているカスミサンショウウオを含むサンショウウオ科とオオサンショウウオ科だけです。
 また、アカハライモリは、多精(一個の卵に多くの精子が入っていくタイプ)だと紹介しましたが、カスミサンショウウオはカエルと同じように、単精(一個の卵に一個の精子が入るタイプ)です。受精した卵は、卵膜の中で、卵割(細胞分裂)をして、2個、4個、8個、16個と細胞を増やしていき(写真9)、表面が滑らかなボールのようになった後で、それぞれの細胞が大きく動き出して神経、目、外鰓をつくり、幼生になっていきます。産卵後、3~4週間で卵膜を破って、卵嚢内を動くようになります。孵化した幼生は、イモリの幼生と同じくバランサー(平均体:幼生期の初期に身体の平衡を取る役割をする)をもっていますが、2週間程度で脱落します(写真10)。幼世紀は主に小さな水生昆虫などを食べて変態に向けて成長していきますが、動くものであればなんでも噛みつくため、幼生どうし共食いをすることも多く、自分たちの仲間を栄養源の一部にしています(写真11)。

4個、8個、16個、32個と分かれていく状態
写真9.4個、8個、16個、32個と分かれていく状態

外鰓やバランサーができている状態
写真10.外鰓やバランサーができている状態

孵化を始めた幼生
写真11.孵化を始めた幼生

 幼生は、6~8月に変態して陸上生活に移行します(写真12)。飼育下で2年目から産卵が見られたことから、孵化後2年程度で性成熟し、産卵場に出現すると考えられます。幼体、成体は昆虫やクモ、ミミズなどの小動物を捕食しているようです。冬期は、瓦礫や朽木、腐食土の下で越冬しています。

変態直後の亜成体
写真12.変態直後の亜成体

投稿者: 秋山繁治 日時: 17:37|コメント (0)トラックバック (0)

カスミサンショウウオの生活史

 カスミサンショウウオの成体は、繁殖場所である水田側溝や湧水が流れ込む水溜まりの周辺の林床で生活しています。地中のミミズやモグラなどの掘った穴を利用しています。夜行性で、地中で生活しているので、日常生活で出会うことはめったにありませんが、その姿を見かけるとすれば、繁殖期に産卵場所に集まってきたときです。
産卵は、県南部では2~3月で、県北部では4月が最盛期になります。県北部の上斎原村や西粟倉村のように残雪があって水温が上がらない地域では、5月になって産卵がみられる場合もあります。流れがないか弱い、そして水温が安定した場所を選んで、毎年同じ場所を産卵に利用します(写真4)。

産卵場所 
写真4.産卵場所(玉野市)

 産卵場所に訪れるのは雄が先です。県南部の備前市で、最盛期より随分早い1月1日に水中に潜んでいる雄を見つけたことがあります。気の早い雄は12月でも産卵場に現れて、雌をまっているのかもしれません。この時期は、雌雄ともに尾幅が広くなり、尾長も長くなります。特に雄の変化は顕著で、頭幅が大きくなり、尾がひれ状に見えるほど著しく変化をする個体もあります。
 水中に入り、繁殖場所にたどり着いた雄は落ち葉などの堆積物の下、植物の陰、泥の穴、石の下などに縄張り(テリトリー)をつくり、水中でじっと雌が産卵にくるのを待ちます。近づいてくる雄には、「噛み付く」、「吻端でつつく」、「尾を激しく振る」などの行動をします。捕獲した雄の尾に傷をしたものが多くみられるのは、縄張り争いの結果かもしれません。産卵直後の卵嚢近くで雄を見つけることが多いのは、その場所で縄張りをつくっているからです。
 雄は他の個体に出会うと、吻端を相手に近づけ、雌のときには尾や体全体を硬直させたよう姿勢で、ピクピクと振動させる行動をします。この行動で雌は雄が近くにいることを判断していると考えられます。雄に刺激された雌は、植物の根や茎、枯れ枝、石などにしがみつき、総排出腔開口部をおしつけるようにしながら卵嚢の端(ゼリー状のもの)を付着させてから、身体を離していきます。卵嚢の端は産卵後しばらくの間だけ接着力があるので、接着された部分を支点にして、房になったバナナ状の卵嚢を対にした形で産卵します(写真5、6)。県南部では一卵嚢に直径2~3mmの卵が30~60個入っています。卵嚢の形や含まれる卵数については、地域によって差があり、岡山県上斎原村で産卵されたもの(写真7)では、15~30個、北九州市のもの(写真8)では、一卵嚢に80~120個の卵が入っています。

吸水して膨らむ前の卵嚢
写真5.吸水して膨らむ前の卵嚢

産卵直後の卵嚢
写真6.産卵直後の卵嚢(玉野市)

カスミサンショウウオの卵嚢
写真7.カスミサンショウウオの卵嚢(上斎原村)

カスミサンショウウオの卵嚢
写真8.カスミサンショウウオの卵嚢(北九州市)

 産卵が近くなると、雌の総排出腔付近から誘引物質(フェロモン)が分泌されるようで、雄の動きが急に激しくなり、誘引物質が付着した卵嚢を抱えるような姿勢で放精し、受精させます。産卵後10分程度で積極的に抱きつくような行動をしなくなるので、誘引物質が水溶性物質でできており、拡散して効果を失ってしまうと考えられます。産卵前の雌は、卵が卵巣から体腔に排出されているので、腹部をみると黒い卵の粒が見えるのに対して、産卵後の雌は痩せたような状態になっているので、産卵前か後かの区別ができます。雌は産卵を終えると陸上に上がっていきますが、雄はその場所に残って、次の繁殖の機会を待ちます。水中で雌をまっている期間はほとんど餌を採らないので、繁殖期の終わりには体重は減り、尾幅、頭幅がしだいに小さくなり、やがて繁殖場所を離れていきます。

投稿者: 秋山繁治 日時: 17:00|コメント (0)トラックバック (0)

カスミサンショウウオ

カスミサンショウウオについて
 現在、岡山県にはサンショウウオ科の仲間が4種類生息していますが、カスミサンショウウオは県南部の児島半島から県北部までに最も広く分布しています。サンショウウオ科には、池や沼、湧水の水溜まり、緩やかな流れの淀みなどに産卵する止水性の種と、山地の流れの激しい渓流で産卵する流水性の種がありますが、カスミサンショウウオは西日本の代表的な止水性の種であり、岡山県では止水性の種はこの種だけです。
 カスミサンショウウオは、全長は成体で7~11cm、雄(写真1)の方が雌(写真2)より体がやや大きいです。体色は暗褐色から黄褐色で、脇腹に霞のような斑点と尾の上下に黄色の縁取りがあるのが特徴ですが、地域による個体差が大きく、特徴の現れていないものもいます。県南部の標高300m以下の低地に棲むものと、標高600~1000mの県北部の高地に棲むもの(写真3:高地型)で、外部形態や卵嚢に違いがあるようです。

繁殖期の雄
写真1.繁殖期の雄(岡山市)

産卵前の雌
写真2.産卵前の雌(佐伯町)

高地型のカスミサンショウウオ
写真3.高地型のカスミサンショウウオ(上斎原村)

投稿者: 秋山繁治 日時: 16:47|コメント (0)トラックバック (0)